【卒業生インタビュー】好きを続ける継続力で仕事に──電子工作の楽しさを届けるオンラインショップ運営者に聞く等身大のキャリア 佐藤季輝

学校法人 岩崎学園では、各校の卒業生に焦点を当てたインタビューを実施しています。今回は、情報科学専門学校を卒業後、電子部品のオンラインショップ「電子工作ステーション」を立ち上げ、全国の初心者や学生に向けて電子工作の始めやすさを届けている佐藤季輝さん(以下、佐藤さん)にお話を伺いました。

学生時代、LEDキューブづくりから始まった佐藤さんの「ものづくり」。最初はLEDを光らせるだけの小さな回路でしたが、光が点いた瞬間の感動が、すべての原点になりました。

周りと同じように就職するしかないと思っていた学生時代から、「好きなことを仕事にしてみたら案外いけた」という実体験に至るまで。その道のりには、ものづくりを続けてきた人ならではのリアルがありました。

分解する楽しさから、ピカッと点いたひかり

――まずは自己紹介をお願いします。

佐藤季輝さん(以下、佐藤さん): 岩崎学園 情報科学専門学校を卒業して、今は電子部品のオンラインショップサイト「電子工作ステーション」を運営しています。電子工作に使うパーツを、例えば数十個単位でしか入手できない抵抗などの細かな部品でも1個から気軽に買えるようにしていて、全国の初心者や学生さんがまずやってみようと思えるような、ハードルの低いお店を目指しています。もともとは趣味で始めた電子工作でしたが、どうせならもっと多くの人に楽しんでもらいたいと思うようになり、気づけば仕事として向き合うようになっていました。

――電子工作に興味を持ったきっかけは?

佐藤さん: 小さい頃から、家電やラジコンを分解するのが大好きでした。中がどうなっているのか、仕組みを知りたくてたまらなかったんです。何度もバラしているうちに、「今度は自分で作ってみたい」と思うようになって、そこから電子工作の世界に引き込まれていきました。

最初に挑戦したのは、LEDをチカチカ光らせるだけの通称Lチカ。ただ光るだけのシンプルな回路なのに、初めて点いた瞬間は本当にうれしくて、「おお、動いた!」と声を上げてしまいました。あの光を見たときの感動が、すべてのはじまりだったと思います。

――学生時代はどんなことをやっていましたか? 

佐藤さん: 授業では、「LEDキューブ」や『自動水やり機』の制作に取り組みました。LEDを立体的に並べてプログラムで光らせたり、タイマー制御で植物に水をあげる仕組みを作ったり。仕組みが思い通りに動いたときの達成感が大きくて、作るほどに電子工作の面白さを実感しました。

さらに改良を重ねた『自動水やり機』の販売も予定しているそうです。

佐藤さん: 放課後は、自分で電子工作のサークルを立ち上げ、「一緒に作る仲間がほしい」という思いから活動を始めました。最初は工作の経験がない学生も多かったので、LEDを光らせるだけのLチカを一緒に体験してもらったんです。LEDが点いた瞬間に「おおっ!」と感動してくれて、そこから「次はこんなことをやってみたい」と目を輝かせる姿を見るのがうれしかったですね。気づけば、自分は教える側になっていました。

活動が進むうちに、プラモデルにLEDを仕込んで光らせるような改造にも挑戦しました。スイッチを入れた瞬間にピカッと光るたび、教室には「はんだ」のにおいと歓声が広がったのを覚えています。誰かの「動いた!」という声を聞くのが本当に大好きでした。情報科学専門学校在籍時の放課後は楽しかったなと今でも思い出します。

当時、電子工作のサークルメンバーで実際に製作された作品

正社員が正解じゃなくてもいい──自分の道を選んだ理由

――卒業後はどのような道に進まれたのでしょうか?

佐藤さん: そうですね。私もまわりと同じように就職活動をしていましたが、もともと面接が得意ではなく、なかなか内定がもらえずに悩んでいました。そこで、「自分の技術を直接見てもらえたら何か変わるかもしれない」と思い、学園祭での展示に全力を注ぐことにしたんです。

授業で制作していたLEDキューブに、さらにセンサーを組み合わせて動きを工夫し、見ていて楽しい作品に仕上げました。結果的にその展示を見に来ていたある企業の社長が感激してくださって、「うちで働いてみないか」と声をかけていただき、そこからIT系の会社に就職することができました。

あの頃は、正社員になることが正解だと強く思い込んでいた気がします。まわりも就職を目指していたので、自分もその流れに乗るのが当然だと思っていました。でも今振り返ると、その経験があったからこそ、働き方や好きなことを仕事にすることについて考えるきっかけになったと思います。


――そこではどんな業務を担当していたんですか?

佐藤さん: システムエンジニアとして働いていました。毎日パソコンに向かってコードを書く日々でした。けれど次第に、そんな折に体調を崩したこともあって、一度立ち止まり、リセットしてみようと決めました。

――その後、どんな活動をしていたんですか?

佐藤さん: 退職後はアルバイトをしながら、動画配信やブログ執筆など、思いつく限りのことを試していました。手探りの毎日でしたが、やってみるたびに新しい発見がありました。動画配信が一時的に注目を集めたこともありましたが、続けていくうちに、自分の中でしっくりくるものとそうでないものが自然と分かれていきました。

最後まで続いたのは、学生時代から取り組んでいた電子工作の発信です。ブログや動画に寄せられるアクセスやコメントが少しずつ増えるなかで、「電子部品を少量で気軽に買いたい」という声が多いことに気づきました。

一般的なオンラインストアでは、少量購入でも価格が割高になり、送料も高くつくのが当たり前。初心者や学生にとっては、始めるまでのハードルがとにかく大きいと感じました。だからこそ、「自分にできる形で解決してみよう」と立ち上げたのが、今のオンラインショップです。小さな試みでしたが、使ってくれる人が増えるにつれて、「続けよう」という気持ちが自然と強くなっていきました。

――まさに、好きなことが人のためになった瞬間ですね

佐藤さん: そうですね。いろんなことを試してきましたが、結果的にうまくいったのは誰かのためにやっていることでした。学生時代に夢中になっていた電子工作を、こうして形にできているのは本当に幸せです。あの頃は想像もしませんでしたが、「就職だけが人生じゃない」と今ははっきり言えます。

「できた!」を増やすための工夫とこだわり

――ショップでは、どんな工夫やこだわりがありますか?

佐藤さん: 初心者の方でも気軽に電子工作を始められるよう、はんだ付けサービスを用意しています。慣れていない人には少しハードルが高い工程なので、必要な部品をあらかじめはんだ付けした状態で提供するんです。最初のステップを越えやすくすることで、「自分にもできた」と感じてもらえたらうれしいですね。また、はんだ付けが手間な部品にも対応しており、電子工作に慣れた玄人の方にも好評です。「仕上がりがきれいですね」と褒めていただくこともあり、そう言ってもらえると励みになります。初心者からベテランまで、それぞれのペースで楽しめるように工夫しています。

佐藤さん: 最近では、毎年恒例の「電子部品のパーツ福袋」もシーズン限定で販売しています。開けてみるまで中身がわからない仕掛けですが、単なるお楽しみ袋ではなく、組み合わせ次第でちゃんと作品が作れるように構成しているんです。「今年は何が作れるんだろう」とワクワクしてくれる人が多く、リピーターも増えています。

――今後、挑戦してみたいことは?

佐藤さん: これは夢ですが、電子部品の自動販売機を作ってみたいです。必要な部品をその場で買えるようにして、もっと気軽に電子工作を楽しめる環境をつくりたいんです。たとえば、学校や駅の近くに置けたら、「あ、あのパーツ切らしてた!」ってときにもすぐ手に入る。そんな風に、日常の延長で電子工作ができる社会になったら面白いですよね。

いずれは実店舗も構えたいと思っています。お店に来て、動作確認や使い方をその場で教えられるような場所にしたい。パーツを売るだけじゃなく、「ここに来たら何か作れる」「誰かと話せる」そんな場所があってもいいなと。電子工作って一人でやる趣味のイメージがあるけど、実は人とのつながりがすごく大きいんです。だからこそ、リアルな場を通してものづくりの輪をもっと広げていきたいですね。

――最後に、学生たちへメッセージをお願いします。

佐藤さん: 好きなことを続けていくのは、思っている以上に根気がいります。途中でうまくいかないことも多いし、報われない時期もあります。でも、諦めずに続けていれば、いつか必ずピカッと輝く瞬間がきます。自分もそうやって、少しずつ形にしてきました。

大事なのは、焦らず、好きなことに実直でいることです。自分の好きを大切にしながら、それをどう人のために活かせるかを考えてみてください。時間はかかっても、真っすぐに続けていけば、きっとあなたなりの光が灯るはずです。

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