
竹下理恵さん
『バチェラー』出演をきっかけに広がる活動
──ギャルサー時代からメイク講師になるまで
フリーランス
学校法人岩崎学園では、各校の卒業生に焦点を当てたインタビューを実施しています。今回は、横浜fカレッジのメイクコースを卒業後、化粧品ブランド「MACコスメティックス(以下、M・A・C)」で10年間勤務し、現在はフリーランスのメイクアップアーティストとして活躍中の竹下理恵さんにお話を伺いました。
メイクレッスンやセミナー登壇、専門学校での講師活動など幅広い分野で活躍するなか、週1回、母校である横浜fカレッジでも講師として授業を担当されています。また、リアリティ番組『バチェラー・ジャパン』シーズン5への出演をきっかけに活動の幅をさらに広げている竹下さんに、仕事にかける想いや学生時代のエピソード、そしてこれからの歩みについて語っていただきました。
昼休みに水着で日焼け!?ギャルサー全盛期を駆け抜けた少女が美容のプロになるまで
ーーまずは自己紹介と現在の活動を教えて下さい。
竹下理恵さん(以下、竹下さん): メイクアップアーティストとして活動している竹下理恵です。現在はフリーランスとして、美容に関わるさまざまな現場に立たせていただいています。セミナーや企業イベントの講師、ブライダルのヘアメイク、個人向けのレッスンに加えて、婚活イベントでのメイクアドバイスや眉毛パーマなどの施術も行っています。最近は、メンズ美容への関心が世間でも高まってきていることもあり、男性向けのコスメやメイクの提案にも力を入れています。
母校である横浜fカレッジでは週1回講師も務めており、学生にメイクを教える中で後輩たちと関われるのがとても嬉しいですね。
ーーそもそもメイクを志したきっかけは何だったのでしょう?
竹下さん: 高校1年生で女子高に入学したとき、周囲の子たちがおしゃれすぎて衝撃を受けたんです。私はそれまでバスケットボール一筋で、メイクはまったくの初心者でした。見よう見まねでメイクを始めたころ、友達に「つけまつげを付けて」と頼まれたんですね。その時持っていた100円ショップで買ったつけまつげをつけてあげたら、その子が鏡を見て、「私、こんなに変われるんだ……」って涙を流して喜んでくれたんです。
その子はメイクが初めてで、自信がないタイプでした。でも、自分の姿を見て本当に嬉しそうに笑ってくれて……。「メイクって、こんなにも人を幸せにするんだ」と思った瞬間、その出会いこそが、私がこの道に進もうと決めたきっかけです。
ーー岩崎学園での学生生活はどんなものでしたか?
竹下さん: 当時は“ギャル文化”の全盛期で、私は※パラパラを踊るサークル(いわゆるギャルサー)に所属していました。週末は渋谷のセンター街に集まり、みんなで振り付けの練習をしたり、「誰がセンターのお立ち台で踊るか」なんて真剣に話し合っていて。
しかも当時は、「日焼けしてないとギャルじゃない!」という謎の風潮もあって、日焼けサロンでバイトしながら週3で焼いてました(笑)。
※パラパラ: 主に1990年代後半〜2000年代にギャル文化とともに流行した、ユーロビートに合わせて踊るダンススタイル。
ーーかなり本格的ですね!(笑)
竹下さん: 学校でもその熱量は変わらず、昼休みに日当たりのいいテラスで「今、いい陽が出てるじゃん!」って言いながら水着姿で日焼けして、先生に怒られたりもして(笑)。でも、そういうことの全部が楽しくて、まさに青春でしたね。
今思うと、あんなふうにギャルで自由にやっていた私を、fカレッジの先生たちは、あたたかく見守ってくれてたなと思います。
ーー学校は皆勤賞だったと風のうわさで聞きましたよ?
竹下さん: あっ、本当ですか(笑)!そうなんです。学校がとにかく楽しくて、みんなに会えるのが嬉しかったんですよね。それに、入学したとき先生に「皆勤だと就職に有利になるよ!」って言われて、「毎日行くだけなら簡単じゃーん!」って思って、ちゃんと真面目に通ってました(笑)。今でもその皆勤賞の賞状は大切に取ってあります。
憧れだったM・A・Cで働いた10年、そして独立へ
ーーその後、M・A・Cに就職されて10年間勤務されたそうですね
竹下さん: M・A・Cでは本当に多くの経験をさせてもらいました……学生時代にM・A・Cを知り、企業理念やブランドの姿勢に強く惹かれ、「絶対ここに就職したい」と思うようになったんです。
でも、最初はなかなかうまくいかず、内定をいただけたのは3回目の挑戦でした。その間はアパレルのアルバイトを続けながら、周囲の人や学校の職員から他の企業を勧められることもありました。それでも、自分の気持ちに正直でいたくて、M・A・C一筋で挑み続けたんです。
入社後は、百貨店のカウンターでの接客をはじめ、撮影やショーでのメイク、研修トレーナーとしての指導など、本当にさまざまな仕事に携わりました。特に印象的だったのは、お客さまと直接関われる距離の近さです。仕上がったメイクを見て嬉しそうにされる姿を見るたびに、「美容の仕事には人の心を動かす力がある」と実感していました。
ーーその後、独立されて活動の幅を広げられてますよね
竹下さん: M・A・Cを退職してからは、さまざまな現場でお仕事をさせていただいています。最近では企業や自治体からセミナーのご依頼をいただくことも多く、美容やメイクに関わることであれば何でも対応しています!
たとえば、20代後半から30代以降の女性の方々からは「若い頃は感覚でできていたけれど、年齢を重ねると似合うメイクが分からなくなった」といったお悩みをよく聞きます。そんな方々に寄り添いながら、自分に合うメイクやスキンケアを提案しています。
ーーかなり幅広いお仕事をされているんですね
竹下さん: 本当にいろんなご依頼をいただきます。舞台の特殊メイクのような案件や、以前は「※死者の日メイク(カトリーナメイク)」と呼ばれるような伝統芸能系のメイクを頼まれたこともありました(笑)。個人的にもそういう振り切ったテーマも大好きです。私は、やれることがあるなら何でもやります!という気持ちでいます。
※死者の日メイク(カトリーナメイク): メキシコの伝統行事「死者の日」で見られる、髑髏(ドクロ)をモチーフにした華やかなフェイスペイントのこと。
ーーセミナーでは男性の参加者も増えているそうですね。メンズ美容にも注力されているとか
竹下さん: はい、メンズ美容の需要もすごく増えています。「男性向けのコスメってどう選んだらいいのかよくわからない」とか、「百貨店のコスメ売場は敷居が高くて入りにくい」といった声をよくいただくんです。そういったかたに向けて、セミナーではメンズコスメの選び方や使い方を紹介しています。
カップルやご夫婦で参加されることも多く、「家でも一緒に使ってみます!」と喜んでくださることもありますし、百貨店には抵抗があるかたでも、選び方さえわかればネットで気軽に購入できるので、新しい美容習慣を始めるきっかけになっていると感じています。
ーーちなみに好奇心でお聞きするのですが、男性のメイクは女性のメイクとはかなり違うものですか?
竹下さん: やはり全然違いますね。私自身も仕事で男性にメイクをする機会があるので、そこで得た経験やコツをセミナーなどでみなさんにお伝えしています。
ーー『バチェラー・ジャパン』シーズン5への出演も話題になりましたが、出演のきっかけは?
竹下さん: きっかけは失恋だったんです。当時、将来的に結婚も考えていた彼と別れてしまって。「もう、婚活しにいくぞ!」という決意そのままの気持ちで応募しました。その彼とは恋愛リアリティショーをよく一緒に観ていて、特に『バチェラー』はお気に入りでした。なので、もし自分が出たらきっと気づくだろうな……って(笑)。
ーー実際に元彼は気づいたんでしょうか……?
竹下さん: 番組が配信されたらすぐに連絡が来ましたが、それで前よりも冷めちゃいました(笑)。
ーー番組出演後、お仕事にはどのような変化がありましたか?
竹下さん: 出演をきっかけに、仕事の幅が一気に広がりました。特に、企業から「セミナーに登壇してほしい」、「コスメブランドのプロモーションに出演してほしい」といったご依頼をいただくことが増えました。自分の活動を知ってもらえる機会が増えて、出会える人の層も大きく広がりましたね。
ーーかなりポジティブな影響があったようですね。周囲の反応にも変化がありましたか?
竹下さん: 一番大きかったのは、信頼感が増したことですね。初対面の方からも「あの番組を見ましたよ」と言っていただくことが多くなり、すぐに親近感を持ってもらえるようになりました。ただ、そうした肩書きに甘えるのではなく、「出演をきっかけに何をするか」を常に自分に問いながら、目の前の仕事に一つひとつ丁寧に向き合うように心がけています。
ーー竹下さんの中で大切にしていることや、宝物はありますか?
竹下さん: やっぱり「ご縁」って、すごく大事だなと思っていて。美容の道に進むきっかけをくれた高校時代の友達から、ギャルサー時代の先輩や仲間、専門時代の同級生、そして今一緒に仕事をしているかたたちまで……いろんな人との出会いが、今の私につながっているなって感じるんです。ひとりではできなかったことばかりだし、本当にありがたいなって思います。
それから、プライベートでの宝物はペキニーズとチワワのミックス、愛犬の「みぞれ」です。もう完全に家族ですね。忙しい日でも、この子がいてくれるだけで本当に癒されます。1歳の誕生日にはスタジオで記念写真を撮っちゃうくらい、溺愛しています。
ーー最後に、美容業界を目指す後輩たちへメッセージをお願いします
竹下さん: 美容業界は流行の変化が激しいですが、いつの時代も人の「悩み」に寄り添える仕事だと思っています。メイクや美容で誰かの人生が変わる瞬間を、一緒に迎えられるのは本当に幸せなことです。SNSやオンラインの情報も大切ですが、人と直接関わる経験を積んでほしいですね。その経験は必ず将来の財産になります。
そして、何よりも自分の「好き」という気持ちを大切にしてください。その熱量こそが、誰かを笑顔にできる力になると思います。