【卒業生インタビュー】イラストと仲間とインターネットで広がる世界に生きる「お絵かきさん」 miyameさん

学校法人岩崎学園では、各校の卒業生に焦点を当てたインタビューを実施しています。今回は、横浜デジタルアーツ専門学校(以下、YDA)総合デザイン科を卒業し、現在はイラストや創作企画を中心に活動を続けているmiyameさんにお話を伺いました。

イラストを「仕事」とは呼ばず、仲間と一緒に「世界を遊ぶ」ためのツールとして描き続けているmiyameさん。まるでインターネットの中からそのまま飛び出してきたような軽やかな存在感で、学生時代から現在までの歩み、そして創作に対する思いを語っていただきました。

「お絵かきさん」として生きる

――まずは自己紹介をお願いします。

miyameさん: イラストを描きながら、仲間と一緒に「PRODUTE-ME(プロデュートミー)」というクリエイターチームでも活動しています。名前の由来はproduce(制作)とcreate(創造)を組み合わせたもので、「自分が作り出す」という意味です。みんなでオリジナルの世界観を育てたり、本を作ったり、時には依頼を受けて活動したり。SNSやYouTube、同人イベント「コミティア」などを通じて、インターネットから外に飛び出して遊んでいるような感覚で続けています。

「イラストレーター」と言われることもありますけど、私はあんまりそういう肩書きで自分を呼んでいなくて……イラストレーターというよりは“お絵かきさん”って名乗る方がしっくりきますね。仲間と一緒に創作している延長線上、というイメージが強いです。

寝不足は電車で解消!いつも絵のことを考えていた学生時代

ーーいつ頃から絵を描き始めたのでしょう?

miyameさん: 物心ついたときからペンを持ってましたね!最初はディズニープリンセスや少年漫画のキャラクターをたくさん描いてました。それから小学生にあがった頃に、初音ミクと出会って、二次創作の世界にも足を踏み入れましたという感じです。

中学・高校では、いわゆる※黒バス期があって。影響を受けすぎて顔は幼くて可愛いのに……首が太いキャラばかり描いてしまった時代もありました(笑)。そこから少しずつ一次創作に移っていったのが2015年、高校1年生の頃です。

※「黒バス期」とは、漫画・アニメ『黒子のバスケ』の放送している期間を指す

ーー進学先として岩崎学園を選んだ理由は?

miyameさん: とにかく勉強が嫌いで(笑)。AO入試で早めに進路を決めたかったんです。大学よりも専門学校の方が自分には合っていると感じていましたが、たいていは専門学校は2年制なことが多いじゃないですか?私はできるだけ長く学生生活を楽しみたいと思っていたので、3年制のYDAの総合デザイン科に決めました。

ーー実際に入学してみてどうでしたか?

miyameさん: 楽しかったです!もちろん苦手な授業もありましたが……でも、YDAで学んだことは、確実に今につながってるなって思います。 授業で生まれた赤っぽい子(ジョシュ)や青っぽい子(ハカセ)などのキャラクターは、いまでも作品に登場するくらい愛着があります。

左) ジョシュ 右)ハカセ

実際に授業で制作されたイラスト

ーー印象に残っている授業や経験はありますか?

miyameさん: やっぱりデザイン系の授業ですね。※顧客導線の考え方や、ポスターを作る際のフォントやレイアウトの知識は、独学では絶対に学べなかった部分です。ポスター制作やデザインの課題で学んだことは、いまの創作や企画、お仕事に直結していて常々やっていてよかったなって思います。



※顧客導線=人が作品や商品に触れる際の「出会いから体験までの流れ」を設計する考え方。


ーーなにか学校で苦労したこととかありましたか?

miyameさん: 大変だったのは、3年生と2年生でチームを組んで作品を制作するプロジェクト学習です。先輩役の3年生は私ともうひとりだけでしたが、その子が途中で・フェードアウトしてしまい……最後は私ひとりでやり切ることになりました(笑)。その時期はプライベートでもいろいろ重なり、「私の人生ってどうなってんの〜!」と絶望したのを覚えています(笑)。

当時の私は「頼むより自分でやったほうが早い」と思うタイプで、人にお願いするのが苦手でした。ただ、後輩にとっては先輩とのグループワークでいろんな経験をしたいだろうなと想像していました。だからこそ、どの範囲を任せるかは本当に悩みました……。怖がらせたくないし、できれば楽しんでもらいたい。なので、お願いするときは、毎回申し訳ない気持ちもありましたね。

これまでにない経験ばかりで、とにかくチームで一生懸命取り組み、最後までやり切れたときには大きな達成感がありました。今振り返っても、貴重な経験だったなと思います。

ーー学校以外はどんな生活を送っていましたか?

miyameさん: 学校以外の時間でも、常に絵を描いていましたね!アルバイトもせず、とにかく描くことばかり。授業が終わって帰る電車の中ではいつも「今日は何を描こうかなぁ」と考えていて、家に着くとすぐに描き始め、気づけば深夜2時。そこから就寝して、朝は7時に起きる生活でした。

でも睡眠不足だったわけではなく、利用していた電車が始発駅近くだったので、朝は座って寝られました。夜に足りなかった分をそこで補っていたんです。まあ、そんな感じで(笑)。今もそうですが、絵を描くことが生活の中心でした。

卒業後は接客業へ──店内をオリジナルキャラクターで埋め尽くし、そして独立へ

ーー卒業してからのキャリアは?

miyameさん: 最初はあえてイラストではない仕事に就きました。ゆくゆくはイラストを仕事にするとしても、その前に一度は社会を経験しておこうと思ったからです。選んだ就職先は接客業でした。アルバイト経験がまったくなかったので、まずは接客を通して社会に出てみようと考えたんです。人と接すること自体は苦手ではなかったので、不安はありませんでした。

ーーその会社とは、どういうきっかけで出会ったんですか?

miyameさん: 岩崎学園が主催する、合同企業説明会です。対応してくれた担当者の方が歳も近く、話しやすい雰囲気だったので、その場で「面接を受けたいです!」と伝えたところ、トントン拍子に決まってしまいました(笑)。

ーーきっかけが独特な感じもしますが……(笑)。それで実際に働いてみてどうでしたか?

miyameさん: 楽しかった思い出しかないくらい、素敵な時間を過ごさせていただきました。最初は接客がメインでしたが、あるとき会社の人に「miyameさん、お店のポスターとかデザインできる?」と声をかけられたんです。そこで「やれますよ!」と答えたのをきっかけに、イベントポスターの制作や店内のPOPなどを任されるようになりました。

実は面接の段階で「社内にメディア部を立ち上げたい」という構想があったそうで、Adobeのツールを扱える人材を探していたらしく、それも入社の後押しになっていたようです。

忙しいときはホールに出て、余裕があるときは裏でイラスト制作。そんな働き方をさせてもらって、とにかく楽しい職場でした。

ただ、次第にイラストの仕事が増えてきて、「これならお金に困らずやっていけそうだ」と思えるようになり、接客業を辞めて独立。フリーになってからは税金や相場感の難しさに悩まされつつも、基本的には楽しく活動を続けています。

インターネットと仲間が広げる表現

ーーイラストの仕事は、どういった形で依頼が来るのでしょうか?メールとかDMが多いですか?

miyameさん: そうですね。私は作品をたくさんSNSに投稿しているので、それを見た人からメールやDMで依頼をいただくことが多いです。知り合い経由で広がることもありますが、自分から営業することはしていません。

ただ、いまでもイラストに値段をつけるのは苦手で……。自分の絵に金額がつくことに、少し抵抗があります。そんな私の性格を、PRODUTE-MEのメンバーや仲間たちは理解してくれていて、私にバレないようにお礼を振り込んでくれたり、モノで返してくれたりするんです。そうした関係性があるからこそ、「もっとやりたい」と思えているのだと思います。

ーー活動していて、いまでも思い出に残ってるような印象的な依頼はありますか?

miyameさん: やっぱり、同じチーム(PRODUTE-ME)の中にいるα部のイラストレーターと一緒に、ボカロPの方とコラボした作品ですね。動画や音楽と合わせてキャラクターを動かすのがすごく楽しかったです。初めてボカロ文化に触れたときから、コンポーザーの方とタッグを組んで作品を公開するスタイルにずっと憧れていました。

ただ、私のスタンスはお金儲けではなく、「楽しんで自分の好きなものを表現したい」というもの。だから当時は、同じようなスタンスで一緒に楽しめる人を探していました。

やがて、奇跡的にそういう仲間と出会えて、一緒に作品を作るようになりました。お金儲けじゃなくて「好きだからやる」という空気が、本当に心地いいんです。

ーー岩崎学園公式キャラクター「HARUKO」のデザインも担当されていますよね。実際にデザインしたときのことを教えてください。

miyameさん: 最初にいただいたリクエストは“パッと見てわかる、明るくて元気な女の子を”というザックリしたものでした。ただ、打ち合わせの段階で方向性はある程度固まっていて、私が特に意識したのは色です。掲出されるポスターの背景が派手だったので、それに負けない存在感を出すことを大事にしました。実際に校内に掲出されているのを見たときは、ようやく実感が湧きましたし、「生きている限りHARUKOを描き続けたい」と強く思いました。

打ち合わせの場で描いていただいたラフ画

完成バージョン、先程のものと比べても、ほぼ完成状態だったことがわかります

ーー同じく本学園が企画するイベント「ハルコレ(ハマる学生COLLECTION)」のビジュアルを担当されたときはどうでしたか?

miyameさん: 第1回のときはデザインの修正などがあり、納期がとても短くて、正直「もっとデザインを詰めたかったな」という思いが残っていました。だから第2回は自分の中でリベンジマッチだって気持ちで描きました。前回の反省を活かしてブラッシュアップできて、納得のいく仕上がりになったんです。自信を持って出せた作品だったので、とても満足しています。

ハマる学生COLLECTION―ハルコレ―」初年度のキービジュアル

「第2回ハマる学生COLLECTION―ハルコレ―」のキービジュアル

制作スタイルとこだわり

ーーキャラクターを描くとき、どんなふうにアイデアが浮かぶんですか?

miyameさん: キャラクターが頭の中でポーズをとってくれていて、それを写真に撮るみたいに描いています。描き始めるともう止まらなくて、ペンが勝手に動いてくれるような感覚になるんです。

あたまの中にキャラクターを登場させて、「インタビューさせて!」とお願いして「はーい!」と答えてくれてるところを描いてくれたそうです

ーー描き始めてから完成までは、どんなスタイルで取り組んでいますか?

miyameさん: 集中力がだいたい3日間しか持たなくて(笑)。だからその間に仕上げきるのが鉄則です。間を空けちゃうと「全部描き直したい!」ってなっちゃうので、とにかく勢いで突っ走りますね。

ーー描いている間は音楽を聴いたりとか、コーヒーを必ず飲むとかそういうルーチンみたいなのはありますか?

miyameさん: 音楽を作業BGMとして聴くこともありますが、普段はゲーム実況を観ていることが多いです。実況を画面に流しながら絵を描いていて、終わるころには絵も気づいたら完成している……そんなサイクルですね(笑)。

ーー個人的にはデスク環境がどうなっているのか気になるのですが、作業環境はどんな感じですか?

miyameさん: すごくシンプルですよ。24インチのモニター1枚とペンタブだけです。サブモニターも考えたんですけど、首を痛めそうだなと思ってやめました(笑)。

ーー制作で特にこだわっていることはありますか?

miyameさん: 必ず「この表現には意味を持たせたい」という意識で描いています。流行ってるから入れるとか、むやみやたらに「こういう要素を足してください」と言われて入れるのは嫌で。そのキャラクターや世界にとって意味があるものしか描かないようにしています。観た人が作品を観たときに物語や意味が伝わるようなストーリー性を絵に込めています。

ーー将来イラストレーターになりたいと思っている人へメッセージをお願いします!

miyameさん: そんな偉そうに上からものを言うのも気が引けますが……しいて言うなら、今はSNSがあれば誰でも作品を発表できる時代です。だからこそ、自分が作ったものはどんどん出してほしい。ただし、SNSの使い方は間違えないように。良い方向に使えば、必ず仕事にもつながります。

それから、イラストだけじゃなくて映画やドラマ、人の絵など、いろんなものをインプットとして吸収してほしいですね。自分の中に取り込んで、それをオリジナリティに変えていくことが大事だと思います。

そして何より、「楽しいから描き続けられる」という気持ちを忘れないでほしいです。私も楽しいと思えたからここまで続けられました。嫌になっていたら、きっと途中でやめていたと思います。だから、無理のない範囲で“楽しい”を大事にしながら、どんどんやれることを広げていってください。