【連載:教育を科学する】第1回 なぜ今、教育を「科学」するのか
| この記事は、岩崎学園が取り組む、脳科学等のエビデンスに基づいた次世代教育システムの全貌を解説する連載の第一回。池谷裕二教授監修のもと、「楽しむ力」を科学的に再現し、自律的に学び続ける人材を育てる設計思想がわかります。 |
「あの学生が、こんなに変わるのか。」――教育の現場に立っていると、ときどきそんな瞬間に出会います。
皆さま、はじめまして。岩崎学園 本部長の伊藤泰宏と申します。
20年以上にわたり教育や学校マネジメントの現場で、数多くの学生の成長を見守るなかで、一つの確信を得ました。知的好奇心に火がつき、「やってみたい」という内発的動機が芽生えた瞬間こそが、成長の真の起点になる――ということです。
2027年に創立100周年を迎える岩崎学園は今、この主体的な学びを偶然に頼るのではなく、確かなエビデンスに基づいて再現することを目指しています。そのために、東京大学大学院 薬学系研究科の池谷裕二教授を監修に迎え、「脳科学」「心理学」「教育工学」「データサイエンス」を融合させた次世代の教育システムの構築を進めています。
本連載では、このシステムの全貌を1年かけて紐解いていきます。
1. 脳科学が裏づける「楽しむ力」――池谷裕二教授との協働
私たちが育成を目指すのは「楽しむ力を持つ人材」です。ここでいう「楽しむ」とは、単なる娯楽ではありません。知的好奇心を持って対象に没頭し、自律的に学びを深めていく状態を指します。
脳研究の第一人者である池谷教授の監修のもと、人が「楽しい」と感じる瞬間に脳内で何が起きているのかを解明し、そのメカニズムを教育プログラムの設計原理として組み込んでいます。
「楽しいから、続く。続くから、専門性が身につく。」
このシンプルな循環を、学生個人の頑張りに頼るのではなく、学園のシステムとして科学的に再現すること。それが、岩崎学園の新たな挑戦です。

2. 教育システムの3つの柱
本システムは、以下の3つの専門領域を軸に設計されています。
・脳科学(BERI理論): Behavior―Emotion―Reward―Intrinsic motivationの頭文字をとった独自フレームワーク。「やる気」を精神論ではなく、身体と脳の働きから生み出すアプローチです。
・心理学(自己決定理論・経験学習): 「やらされ仕事」を「自分の意志」に変え、失敗を成長の糧にするリフレクション(省察)の技術。
・データサイエンス(AI活用): 100年の指導知見をデータ化し、学生一人ひとりに最適な伴走を行う個別支援AI。
これらは単なる理論に留まりません。たとえば現場の教職員が「否定せず共感から入る」という共通の行動指針を持つことで、学科や授業を問わず一貫した教育の質を担保しています。理論と実践が噛み合う仕組みを、学園全体で運用しているのです。
3. 連載の全体像:1年をかけてお伝えすること
この教育システムが学生をどう変え、どのような未来を創るのか。以下の3つのフェーズで毎月発信してまいります。
・第1フェーズ(理論編): 池谷教授との対談を通じた「やる気と身体」の科学、教員の行動指針の設計思想。
・第2フェーズ(実践編): 自己決定理論に基づく「自律」のプロセス、失敗をデータに変えるリフレクションの技術。
・第3フェーズ(展望編): AIとデータが拓く個別指導の未来、そして「自律した人材」が社会で活躍する姿。

私たちが目指すのは、学生が自分自身の可能性に「ハマる」瞬間を一つでも多く創り出し、生涯にわたって自ら学び続けられる力を育むことです。
これから1年間、どうぞお付き合いください。